ともえや 塩ブリのお雑煮

あけましておめでとうございます。巴家は昨年6月にオープンして初めてのお正月を迎えました。今年は利用者の皆様にさらにご満足いただけるように、充実した環境づくりを目指してまいります。

さて、お雑煮というと地方によって作り方が違うのはもちろんですが、各家庭でもこだわりの「我が家の味」があるのではないかと思います。広島ではお餅は丸餅を煮る(茹でる)のが一般的。トッピングはブリやハマグリが多いですが、牡蠣を入れる家庭もあるようです。中和田家のお雑煮は、大正時代に岡山から嫁いできた先代の母親がすでにこのレシピで作っていたそうですが、ちょっと独特なのでご紹介しようと思います。

まず雑煮の出汁は、昆布、鰹、いりこから取った出汁、ハマグリの茹で汁、塩ブリの茹で汁の3種類を合わせて作ります。ブリの茹で汁を入れる、と言うとほぼ100%の人が「うわ~っ、生臭そう!」と拒否感を示します。そう、とっても生臭いんです。。というのは嘘で、臭みは全くなく、コクが出て美味しくなります。具材は大根、ニンジン、ごぼう。トッピングはブリ、ハマグリ、春菊、カマボコなど。味付けはほぼ塩ですが、最後にお醤油を少し。

三次は山間地なので、流通の問題もあって、元々は保存のために魚に塩を振っていたのでしょうが、塩を振ると魚の旨味が凝縮されてより美味しくなります。一昔前は近所の魚屋さんがお正月用のブリにいい塩梅に塩を振ってくれていました。そしてフィレの一番良い部分はお刺身に、それ以外は茹でてお雑煮のトッピングに使っていました。最近ではそんな身近な町の魚屋さんがなくなってしまい、塩ブリを手に入れることができなくなってしまったのは残念です。鰹は削り節ではなく、鰹節(いわゆる枯節)を一本買って削っていましたが、高価な上、使うにも手間がかかるのでいつの間にか台所から姿を消しました。ハマグリも価格高騰して国内産はとても手が出ません。

そんなわけで、お雑煮を作るための具材が年々手に入れにくくなり、我が家の味を再現することが難しくなっています。そこで最近頼りにしているのがこの「だし道楽」です。出汁がうまく取れなくても最後にこの調味料を少し加えるだけでかなり旨味が増します。ただし入れすぎると、主張が強すぎてそれまでの努力を一瞬で消してしまうという代物です。

ところで、お正月用の食品でも中国産のハマグリや韓国産の栗の甘露煮など、安全性が気になって敬遠してしまうものが結構あります。鰹節については、国産なので安全性を疑ったことはありませんが、鰹節を作る過程では燻したり、カビを使ったりするので、EUからは輸入規制されているそうです。EUの和食レストランは出汁の本命の鰹節が使えないとなると、何から出汁を取っているのか、ちょっと気になります。